母乳の保存と解凍

搾乳直後の母乳には、生の母親細胞と多量の栄養素、成長因子、その他多くの保護成分が含まれています。時間の経過と温度の変化に伴いこれらの成分の有効性は低下し、その一方で細菌汚染と病原体増殖のリスクは増加します。搾乳直後の母乳は未殺菌状態ですが、非病原細菌や病原菌、ウイルス、マイコバクテリウム、菌など、様々な有機体が含まれています。母乳内に含まれる細菌の量は個人によって大きく異なりますが、通常確認されている有機体のほとんどは、お母さまの乳首や乳房からの非病原性の皮膚の正常細菌叢か、腸管乳腺経路を通って乳房に移行してきた赤ちゃんの胃腸系を保護する有機体です。

Medela(メデラ)母乳の保存と解凍

微小生物、脂質組成、細胞組成、抗菌成分、抗酸化作用に関する保存の効果は大々的に調査されています。ただし、多くの要因はいまだ明らかにされていません。時間の経過に伴い、異なる温度(室温、冷蔵、冷凍)での母乳の保存に起因するさまざまな問題が生じます。そのため、温度や保存環境ごとに推奨事項が必要です。

保存の準備

母乳の免疫特性は、ポリエチレンを含有しないガラス製または硬質プラスチック製の容器で保存した場合、最適な状態で保存されます。また、ビスフェノール A (BPA)製の容器は有害な影響があるので、母乳ボトルとして現在使用されていません。ガラス製の場合は割れる心配があるので、ビスフェノール A (BPA)フリー素材で作られた、もれ防止のふたのある食品等級の硬質プラスチック製の容器が理想的です。清潔で無菌または滅菌処理済み容器も使用できます。

搾乳直後の母乳の保存に関するガイドライン (健康な正期産児の場合)

室温
16 ~ 25°C

(60 ~ 77°F)

冷蔵庫
4°C (39°F)
以下

冷凍庫
-18°C (0°F)
以下

冷蔵庫の中で解凍した母乳

 

最適なのは4時間まで

*非常に清潔な条件下でさく乳した母乳の場合、6時間まで

 

 

 

 

最適なのは3日間まで

*非常に清潔な条件下でさく乳した母乳の場合、5日間まで

 

 

 

最適なのは6か月まで

*非常に清潔な条件下でさく乳した母乳の場合、9か月まで

 

 

 

 

室温: 2時間まで

冷蔵:

24時間まで

再冷凍しないでください!

*非常に清潔な条件下で搾乳をするためのガイドライン:

搾乳を始める前に、お母さまは、せっけんと水、またはアルコールベースの手指用消毒剤を使って、手を洗います。搾乳器の部品、ボトル、搾乳を行う場所を清潔にする必要があります。乳房と乳頭を、搾乳の前に洗浄する必要はありません。

温度を均一に保つことができる医療用冷蔵庫の使用、および頻繁な庫内温度の点検を推奨しています。

指示: 搾乳直後の新鮮母乳の保存/解凍に関するこのガイドラインは、当社の推奨によるものです。政府や病院のガイドラインが、このガイドラインとは異なっている場合があります。

保存に関するガイドライン

母乳は、常温の場合、短時間であれば安全に保存できます。一般的に、正確な推奨時間に関しては、研究によってさまざまですが、温度が高くなると搾母乳中の細菌数が増えます。ある主要な研究では、主に非病原性のものに限定した細菌の増殖は、15 °Cの場合、最小限に抑えられます。25 °Cの場合、最初の4~8時間は低く抑えられますが、38°Cで保存した場合、4時間経過すると急増します。著者は、15℃で保存された母乳の場合は24時間、25℃で保存された場合は4時間安全であると結論付けています。結論として、搾母乳は最大26°Cで約4時間安全に保存できます。これよりも低い室温の場合は、清潔な環境で最大6時間の保存も妥当となります。

約4 °Cで冷蔵すれば、室温で放置したときよりも母乳の完全性が維持されます。冷蔵すると、グラム陽性菌の増殖が最大で3日間。

–20 °Cの冷凍庫の場合、最大でも母乳の冷凍保存期間は3ヶ月とすることが最適であると推奨されています。ビタミン A、E、 B、総タンパク質、脂肪、酵素、乳糖、亜鉛、免疫グロブリン、リゾチーム、ラクトフェリンは3ヵ月間維持されますが、ビタミン Cは1ヶ月で失われる可能性があります。6週目までは、細菌の増殖は大きな問題ではありません。ただし、食細胞などの生細胞が失われるので、抗菌作用は新鮮な母乳よりも低くなります。-20°C以下で最大9ヶ月の冷凍保存は許容範囲内とされますが、–80°Cになると、脂肪分解酵素が脂肪を脂肪酸に分解するため、味と匂いが変わることがあります。

冷凍母乳は、冷蔵庫、温水の入った容器、温水による流水で解凍できます。母乳の抗菌特性やその他の生理活性特性は高い加熱温度で減少するため、高温での解凍や、電子レンジ、ガスコンロを使用した母乳の解凍は避けてください。冷凍母乳が液状になれば解凍が完了しますが、まだ冷たく氷の結晶が残っている場合もあります。氷の結晶がある場合、母乳は完全に解凍されていません。細菌の増殖を防ぐために、解凍した母乳は使用する直前まで冷蔵庫に保存し、数時間以上室温で放置しないようにします。解凍した母乳をもう一度冷凍しても、安全な細菌量が維持されることがわかっています。ただし、室温まで完全に解凍してしまった場合、再冷凍すべきではないと提言されています。

研究抄録
ABM clinical protocol #8: human milk storage information for home use for full-term infants(英語)

A central goal of The Academy of Breastfeeding Medicine is the development of clinical protocols for managing common medical problems that may impact breastfeeding success. ...

Academy of Breastfeeding Medicine Protocol Committee (2010)

Breastfeed Med. 5(3):127-30
Human milk: a source of more life than we imagine(英語)

The presence of bacteria in human milk has been acknowledged since the seventies. For a long time, microbiological analysis of human milk was only performed ...

Jeurink PV, van Bergenhenegouwen J, Jiménez E, Knippels LM, Fernández L, Garssen J, Knol J, Rodríguez JM, Martín R (2010)

Benef Microbes. 4(1):17-30
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