NICUにおける母乳安全と感染管理の課題

直接授乳する母乳には最適な栄養、保護成分、および、生理活性成分が含まれています。乳児に母乳を直接授乳できない場合は、直接授乳にできるだけ近い方法で母乳を提供することを目指します。しかしながら、搾母乳の完全性と安全性を維持することは NICU の難しい課題です。

Medela(メデラ)母乳の安全と安全性の課題

授乳のための準備手順が複雑であることから、NICU における安全性と感染管理の際には次のことを考慮します。

  • 母乳に含まれる細菌量。
  • 母乳は搾乳および取り扱い中に病原体に触れる可能性があること。
  • 取り違えたり、母乳を間違った乳児に供給するリスクがあること。

不適切な母乳収集、保存、ラベル付けもリスク源になります。さまざまな課題がありますが、母乳、特に、母親の母乳を摂取することには、母乳の取り扱いに関係する多くの課題を超える恩恵があることは広く認められています。

母乳に含まれる危険因子

新鮮な母乳には、赤ちゃんの免疫系の重要なプログラミングに役立つと考えられている細菌が含まれています。しかしながら、一般的な病原菌が母乳にも含まれています。この場合、赤ちゃん自身がお母さまの母乳(OMM)を哺乳することが禁忌となることもあります。

さらに、薬物や、アルコールやニコチンなどの物質がお母さまの体内に存在する場合があります。授乳中に摂取することが禁止されている薬物はさほど多くありませんが、お母さまと赤ちゃんの状態を個別に検査しなければなりません。

母乳を取り扱う際の懸念事項

母乳は、搾乳、保存、取り扱いなど、供給経路のあらゆる過程で汚染する可能性があります。NICUでは、最も良性の細菌叢でも、身体が弱く免疫不全の赤ちゃんには悪影響を及ぼすことがあります。したがって、母乳の処理中は、抗感染特性をできる限り維持して、病原性有機体の侵入を防ぐことが重要です。そのため、母乳の保存期間、保存温度、ラベル付けを最適化しなければなりません。

保存後、母乳の準備には解凍、加温、栄養強化が必要です。それぞれの処理が母乳の成分に影響して、衛生上の危険につながります。電子レンジや熱湯または沸騰したお湯の使用は推奨されません。これらの方法で解凍すると、母乳の抗感染性特性が破壊されます。また、電子レンジを使用すると母乳の加温にむらが生じることが分かっています。そのため、「ホットスポット」が形成されて、母乳の温度の安全性が確保できず火傷することがあります。

母乳、特に、ドナーミルクは、低温殺菌して病原体の伝搬を防止します。ホルダー低温殺菌は、広く利用されている低温での長時間熱処理(62.5 °C で 30 分)です。ただし、熱処理は、母乳内の免疫成分、抗炎症成分、共生細菌、白血球の著しい損失につながることも広く知られています。さらに、低温殺菌すると、母乳の細菌増殖に対する耐性に悪影響を及ぼします。

そのため、低温殺菌した母乳と低温殺菌していない母乳の管理プロセスと推奨事項は異なります。NICUの医療専門家は、低温殺菌した母乳の取り扱いには、お母さまの母乳よりも注意が必要であることに配慮する必要があります。特に保存状態には注意が必要です。こうすることで細菌増殖を制御します 。

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