母乳の成分: 母乳には何が含まれていますか?

母乳は赤ちゃんに与え、赤ちゃんを守る栄養素でいっぱいですが、母乳の成分は赤ちゃんの成長とともに変化することをご存知でしたか? 母乳には何が含まれているのか、赤ちゃんの成長に合わせてどのように変化していくのか、ぜひ知ってください。

Breast milk composition bottles

赤ちゃんの最初の食べ物として、母乳の成分には水分補給のための水分だけではなく、炭水化物、タンパク質、脂肪分などの基本的な必要栄養素が含まれていることは予想されると思います。1しかし、母乳は単なる普通の食べ物ではありません。栄養以上の価値があるのです。

母乳は何でできていますか?

以下は、毎回の授乳で見られる上記以外の母乳成分の一部であり、これらの多くは複製することができません。

  • 数百万の生細胞。生細胞には免疫を高める白血球だけでなく、臓器の発達と治癒を促す幹細胞も含まれています。2
  • 1,000種類以上のタンパク質3は、赤ちゃんの成長と発達を助け、免疫系を活性化させ、脳内のニューロンを発達させて保護します。
  • 母乳のタンパク質はすべてアミノ酸でできています。母乳にはこのような化合物が20種類以上含まれています。そのうちのいくつかはヌクレオチドと呼ばれ、夜中に増えます。研究者はこれが眠りを誘う可能性があると考えています。4,5
  • 200種類以上のオリゴ糖6と呼ばれる複合糖質は、プレバイオティクスのように作用し、「良い細菌」を赤ちゃんの腸に与えます。これらは血流に侵入する感染症を予防し、脳炎のリスクも低減させます。
  • 40種類以上の酵素7酵素は体内の化学反応を加速させる触媒です。母乳に含まれている酵素は、鉄分吸収を助けるだけでなく、赤ちゃんの消化器系と免疫系のサポートもします。
  • 健全な発達をサポートする成長因子1腸、血管、神経系、ホルモンを分泌する内分泌腺など、赤ちゃんの身体の多くの部分に影響を与えます。
  • ホルモンはというと、母乳には多くのホルモンが含まれています。7この賢い化学物質は、組織や臓器の間でメッセージを伝達し、これらが適切に働くようにします。一部のホルモンは、赤ちゃんの空腹と睡眠のパターンを規則正しくさせ、お母さまと赤ちゃんの結びつきを促します。
  • ビタミンとミネラル – 健全な成長と臓器の機能をサポートするだけでなく、赤ちゃんの歯や骨ができるのを助ける栄養素です。1
  • 抗体は、免疫グロブリンとも呼ばれます。抗体には5つの基本タイプがあり、母乳の中にそのすべてを見つけることができます。8これらは、細菌やウイルスを中和することで赤ちゃんを病気や感染症から守ります。
  • 長鎖脂肪酸は赤ちゃんの健康的な脳と目の発達を助けるだけでなく、神経系の構築における中枢的な役割を担っているため、その名前を聞いたことがあるかもしれません。9また、お気づきのように、これらも母乳の中に複数含まれています。
  • 1,400種類以上のmicroRNA。これらは遺伝子発現を調整するだけでなく、疾患の進行を予防または止めるのを助け、赤ちゃんの免疫系をサポートし、乳房の再形成の役割を担うと考えられています。10

成分リストが長くなりましたが、これらは母乳に含まれる成分の一部で、研究者はいまも発見を続けています。驚くべきことに、これらの成分の値は、赤ちゃんの月齢と必要性に応じて時間の経過とともに変動します。

では、はじめから見てみましょう。

最初の2~3日: 初乳

赤ちゃんが生まれたあとに乳房が作る初期のミルクは初乳と呼ばれます。この濃くて粘性がある母乳は、黄色またはオレンジがかった色であるという理由からだけでなく、まだ弱い新生児に栄養を与え、その新生児を守るのに重要であるという理由から、しばしば「黄金の液体」と呼ばれます。

最初は、非常に少ない量(24時間でわずか40~50 ml11)しか出ませんが、赤ちゃんの胃はビー玉ほどの大きさしかないため、それが赤ちゃんが必要とするすべての量です。初乳は非常に消化しやすいものでもあります。また、量は少ないですが、質で補っています。

初乳の成分

初乳には後の母乳に含まれるものと同じ成分が含まれています。ただ、新生児のニーズに合わせて特別に作られているため、各成分の量だけが異なります。

例えば、初乳は天然のワクチンと呼ばれることがありますが、これは抗体と白血球の値が非常に高いためです。子宮という安全な場所を離れたあとも赤ちゃんを感染症や疾患から守れるように、最初の母乳にはこれらが含まれている必要があります。

初乳の保護機能は赤ちゃんの消化器系にとっても重要です。赤ちゃんは 腸の内膜の透過性が高い状態で生まれるため、 初乳がこれをコーティングして封をします。12,13赤ちゃんが早産児である場合は、危険を伴う腸の疾患である壊死性腸炎(NEC)になるリスクが高いため、特に重要です。13

初乳はミネラルやビタミンも豊富で、ビタミンA、E、およびKの濃度は成乳よりも高いです。初乳に含まれるタンパク質の割合も成乳より高いです。1初乳はまた、赤ちゃんが最初のうんちである胎便を出すことを助ける、下剤の働きもします。14

2~3週目: 移行乳

赤ちゃんの人生の最初の週、産後2~4日目前後に、母乳の質が変化します。乳房が張って固くなったと感じるかもしれませんが、これは母乳が「出始める」変化です。3日目には、赤ちゃんは24時間あたり300~400 mlの母乳を消費するようになります。5日目までには、これが500~800 mlに増えるため、乳房が大きくなっている気がしても驚くことではありません。11

5日目から14日目の間、母乳は移行乳と呼ばれます。15その名前のとおり、初乳から成乳に変化しています。移行乳は色と質感がクリーム状になり、脂肪分、カロリー、ラクトース(天然の糖類)の値も高くなり、急速に成長する新生児のための理想的な食べ物になります。

ただし、母乳はまだ、赤ちゃんの健康を維持するために防御抗体、生細胞、「良い」細菌やその他の生理活性成分で満たされていますのでご安心ください。15

4週目以降: 成乳

赤ちゃんが4週目になる頃までに、母乳は完全に成乳になります。成乳は、赤ちゃんの健康的な成長と発達をサポートするために、タンパク質、糖類、ビタミンおよびミネラル、さらにホルモン、成長因子、酵素や生細胞などの膨大な数の生理活性成分を豊富に含んでいます。7

4週目から、母乳成分の栄養含有量と値は一般的に極めて一定に保たれます。しかし、母乳の成分はそれでも日々、そして授乳のたびに変化することがあります。

例えば、お母さままたは赤ちゃんが体調を崩すと、お母さまの身体は特定の病気と戦うための抗体を作り、これが母乳の一部となります。また、驚くべきことは、赤ちゃんが周りの世界の探検を始めて口におもちゃを入れるようになると、母乳に含まれる細菌と戦う保護酵素の値が上昇します。16このような母乳成分の変化から、母乳が赤ちゃんの変化するニーズにいかに適応しているかが分かります。

前乳、後乳とは何ですか?

授乳の終わりが近づくにつれて、母乳が濃くなりクリーム状になることに気づくかもしれません。これは、授乳が進むにつれて、母乳が乳房内に行きわたる仕組みによって脂肪分が徐々に増加するためです。最初の「水っぽい」母乳が前乳と呼ばれるのに対し、これはしばしば後乳と呼ばれます。この2つの名前から、前乳が後乳に一気に変わると考えてしまいがちですが、そうではありません。その変化はゆるやかなプロセスです。15いずれも授乳を完成させるうえで不可欠なものであり、ビタミン、ミネラル、タンパク質、糖類が豊富に含まれています。

母乳の脂肪分は乳房がいかに張っているかに関係しています。授乳を始めるときに乳房が張っている(脂肪分が少ない)ときもありますし、乳房が張っていない(脂肪分が多い)ときもあります。ですから、前乳と後乳についてはあまり心配しすぎないでください。毎日24時間かけて赤ちゃんはトータルで同じくらいの量の脂肪分を消費します。17

6か月以降の母乳成分

長期間授乳を続けると母乳に何が起こるのか、不思議に思うかもしれません。何か月、何年もの間、お母さまの身体は本当にこのような高い質の成乳を出し続けられるのでしょうか? ご自身のおっぱいを見くびらないでください。これが答えです。

鉄分などの一定の栄養素のたくわえを補強するために6か月目に固形食を始める必要があることは本当ですが、18母乳は依然として赤ちゃんの食事の大部分を占めています。

例えば、赤ちゃんは7か月目のとき、カロリーの93%を母乳から摂取します。11~16か月目の間でも、一日あたりのカロリー摂取量の半分近くは母乳からです。19

ですから、 今後も何か月もの間、授乳のメリットを享受できることを知って、安心してください。

参考文献

1 Ballard O, Morrow AL. Human milk composition: nutrients and bioactive factors. Pediatr Clin North Am. 2013;60(1):49-74.

2 Hassiotou F et al. Cells in human milk: state of the science. J Human Lact. 2013;29(2):171-182.

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5 Sánchez CL et al. The possible role of human milk nucleotides as sleep inducers. Nutr Neurosci. 2009;12(1):2-8.

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8 Brandtzaeg P. The mucosal immune system and its integration with the mammary glands. The J Pediatr. 2010;156(2):S8-15.

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10 Alsaweed M et al. Human milk cells and lipids conserve numerous known and novel miRNAs, some of which are differentially expressed during lactation. PLoS One. 2016;11(4):e0152610.

11 Neville MC et al. Studies in human lactation: milk volumes in lactating women during the onset of lactation and full lactation. Am J Clin Nutr. 1988;48(6):1375-1386.

12 Marchbank T et al. Pancreatic secretory trypsin inhibitor is a major motogenic and protective factor in human breast milk. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2009;296(4):G697-703.

13 Herrmann K, Carroll K. An exclusively human milk diet reduces necrotizing enterocolitis. Breast Med. 2014;9(4):184-190.

14 Lawrence RA, Lawrence RM. Breastfeeding: A guide for the medical profession. 7th ed. Maryland Heights MO, USA: Elsevier Mosby; 2010. 1128 p.

15 Martin CR et al. Review of infant feeding: key features of breast milk and infant formula. Nutrients. 2016;8(5):279.

16 Montagne P et al. Changes in lactoferrin and lysozyme levels in human milk during the first twelve weeks of lactation. InBioactive components of human milk 2001 (pp. 241-247). Springer, Boston, MA.

17 Kent JC, et al. Volume and frequency of breastfeedings and fat content of breast milk throughout the day. Pediatrics. 2006;117(3):e387-395.

18 Kuo AA et al. Introduction of solid food to young infants. Matern child health J. 2011;15(8):1185-1194.

19 Dewey KG et al. Breast milk volume and composition during late lactation (7-20 months). J Pediatr Gastroenterol Nutr. 1984;3(5):713-720.