母乳の保存、冷凍、解凍方法

お母さまがそばにいられない時は、さく乳した母乳が赤ちゃんにとって一番の栄養です。では、母乳を安全に保存、使用するにはどうすればよいでしょうか?

Medela Storing and thawing breast milk

職場に復帰する場合、ジムに通う場合、または寝不足を解消するためにパートナーに授乳してほしい場合は、お母さまがそばにいなくても赤ちゃんが母乳を飲めるよう母乳をさく乳して保存しておくとよいでしょう。さく乳した母乳には健康上の多くのメリットがあるため、たった一回授乳できない場合でも、どの人工ミルクを与えるよりも赤ちゃんにとってはずっと好ましいです。しかし、保存した母乳が赤ちゃんにとって確実に安全であるためには、衛生状態が非常に重要です。適切な母乳の保存方法について引き続き当社のガイドラインをご覧ください。

どの保存方法が最適ですか?

赤ちゃんにとって、母乳は人工ミルクよりも良いものです。ただし、さく乳直後の新鮮母乳は冷蔵保存したものよりも好ましく、また冷蔵保存したものは冷凍したものよりも好ましいとされています。これは、さく乳したばかりの新鮮な母乳が最も優れた

細菌と闘う性質を持っており、抗酸化物質、ビタミンおよび脂肪を冷蔵または冷凍保存した母乳よりも多く含んでいるためです4

さく乳した母乳の保存期間

清潔に安全にさく乳できたら、飲ませる予定に合わせて、常温、冷蔵、または冷凍保存にするかを選び保存しておきましょう。以下のガイドラインに従ってください。

新鮮な母乳の保存ガイドライン(健康な赤ちゃん向け)2,3

 

保管場所

室温
16 °C~25 °C
(60 °F~77 °F)

冷蔵
4 °C(39 °F)
以下

冷凍
-18 °C(0 °F)
以下

冷凍したあとに冷蔵庫で
解凍した母乳

安全な保存期間

最大4時間が最適

非常に清潔な状態*でさく乳した母乳は最大6時間

最大3日間が最適

非常に清潔な状態*でさく乳した母乳は最大5日間

最大6か月間が最適

非常に清潔な状態*でさく乳した母乳は最大9か月間

室温で最大2時間

冷蔵で最大24時間

再冷凍しないでください

 

* 非常に清潔な状態とは、さく乳器の洗浄と消毒に関する当社記事のガイダンスに厳密に従っている状態を指します母乳の保存と解凍に関するガイドラインは推奨事項です。詳細についてはラクテーション・コンサルタントまたは母乳育児の専門家にご相談ください。

赤ちゃんが新生児集中治療室(NICU)または特別ケア病棟などに入院している場合は、洗浄と保管に関して、病院がより厳しい推奨事項を持っている場合もあります。

さく乳した母乳を冷蔵または冷凍保存する場合は、保存している母乳を追跡・管理できるように、必ずボトルまたはバッグにさく乳した量と日付を記入したラベルを貼付してください。

さく乳した母乳の使用ガイドライン

母乳は保存すると脂肪(クリーム)が上に向かい、層状に分かれる傾向があります。赤ちゃんにあげる前に、ボトルを優しく左右に振って、分離した層を混ぜ合わせてください。勢いよくかき混ぜたり、振ったりすると、母乳の栄養成分や保護的成分が損なわれる可能性があります5

赤ちゃんがカップや哺乳びんから母乳を飲むときに、赤ちゃんの口の細菌が自然に母乳に混入します。このため、飲み始めてから1~2時間以内で残った母乳は廃棄するのが最適です。さく乳した母乳を無駄にしないように、少量ずつ保存して必要な分だけを使うことをお勧めします2

冷蔵庫での母乳の保存方法2,3

冷蔵庫で母乳を安全に保存するには、以下のガイドラインに従ってください。

  • さく乳したらできるだけすぐに母乳を冷蔵保存してください。
  • 清潔なBPAフリーの母乳ボトルまたは母乳保存バッグに母乳を保存してください。BPAは、プラスチックの容器やコーティングにかつて広く使用されていた化学物質で、長期的な影響が不明確なため多くの製造メーカーが徐々に使用を中止しています。
  • さく乳した母乳が少量の場合は、すでに保存している別の母乳に足し合わせて同じ容器で冷蔵保存することもできますが、その場合は、あらかじめ冷蔵庫で冷やして同じ温度にしてから合わせてください。体温の温かさの母乳をすでに冷えた母乳に合わせないでください。
  • 母乳は冷蔵庫の奥の上棚など冷蔵庫内の最も冷える場所に保管してください。温度が不安定な冷蔵庫のドアポケットには置かないでください。

冷凍庫での母乳の保存方法2,3

母乳を安全に冷凍するには、以下をご参照ください。

  • さく乳したらできるだけすぐに母乳を冷凍してください。
  • さく乳した母乳があらかじめ冷蔵庫で冷やされている場合は、すでに冷凍保存している母乳に足し合わせてもかまいません。体温の温かさの母乳を冷凍された母乳に加えないでください。
  • 母乳を少量に分けて保存すると(60ml以下)解凍しやすくなり、また無駄を減らすことができます。解凍後にも母乳を足し合わせることができます。
  • 母乳保存容器が冷凍庫で使用可能か確認してください。一部の製品(ガラスびんなど)は低温で破損する可能性があります。Medelaの母乳保存バッグは、 冷凍可能で、すぐに使えてラベル貼付も簡単なため、冷凍した母乳の保存には最適です。
  • 母乳は冷凍すると膨張するため、ボトルやバックの4分の3以上入れないでください。
  • 母乳は温度が最も安定している冷凍庫の奥に保存してください。自動除霜機能のある冷凍庫の場合は、庫内の壁から離して置いてください。

冷凍した母乳の使用2,3

赤ちゃんにとって確実に安全であるように、母乳の解凍方法には気を付けてください。

  • 母乳は冷蔵庫で通常12時間前後で解凍できます。または、冷凍した母乳のボトルまたはバッグを温かい流水(最大37 °Cすなわち99 °F)にさらしてください。冷凍した母乳は常温で解凍しないでください。
  • 凍った母乳が完全に解凍された場合、常温で最大2時間、または冷蔵庫で最大24時間保存してもかまいません。
  • 冷凍した母乳を電子レンジや熱湯を使って解凍しないでください。栄養や保護的な性質が損なわれ、また部分的に熱くなり、赤ちゃんをやけどさせる可能性があります。
  • 常温に置かれている解凍済みの母乳は、2時間以内に赤ちゃんに与えるか、廃棄してください。
  • 一度解凍した母乳は決して再冷凍しないでください。

保存した母乳の温め方2,3

健康な正期産児は常温または体温まで温められた母乳を飲むことができます。どちらかを好む赤ちゃんもいますが、特に気にしない赤ちゃんもいます。

  • 母乳を温めるには、母乳ボトルまたはバッグをぬるま湯が入ったカップ、水差し、またはボウルに数分間入れて、体温まで温度を上げてください(37 °Cすなわち99 °F)。または、ボトルウォーマーを使用してください。母乳の温度が40 °C(104 °F)以上にならないようにしてください。また、電子レンジは母乳を熱くしすぎるため使用しないでください。
  • ボトルまたはバッグを優しく左右に振り(上下に激しく振ったり、かき混ぜたりしないでください)、分離した脂肪を混ぜ合わせてください(上記参照)。

保存した母乳から変なにおいがするのはなぜですか?

冷蔵または解凍した母乳のにおいが違うことがあることに気づかれるかもしれません。これはリパーゼと呼ばれる酵素が脂肪を分解して脂肪酸を分泌するためです。このプロセスは有害な細菌の増殖を予防します。

保存した母乳から石けんや腐った油のようなにおいがするというお母さまもいます。しかし、本記事の安全な保存ガイドラインすべてに従っている場合、母乳のご使用には何の問題もありません2

外出先での母乳の保存

職場と家または保育施設の間で母乳を運ぶ必要がある場合は、保冷剤を入れたクーラーバッグを使用してください2。旅行中のさく乳や母乳の保存については、旅行とさく乳に関する記事をご参照ください。

参考文献

1 US Food & Drug Administration. Using a breast pump. [Internet]. Silver Spring, MD, USA: US Department of Health and Human Services; 2018 [updated 2018 Feb 04; cited 2018 Apr 12] Available from: www.fda.gov/MedicalDevices/ProductsandMedicalProcedures/HomeHealthandConsumer/ConsumerProducts/BreastPumps/ucm061944.htm

2 Eglash,A., Simon,L., & The Academy of Breastfeeding Medicine. ABM clinical protocol #8: human milk storage information for home use for full-term infants, revised 2017. Breastfeed Med 12, (2017).

3 Human Milk Banking Association of North America. 2011 Best practice for expressing, storing and handling human milk in hospitals, homes, and child care settings. (HMBANA, Fort Worth, 2011).

4 García-Lara NR et al. Effect of freezing time on macronutrients and energy content of breastmilk. Breastfeeding Medicine. 2012;7(4):295-301.

5 Office on Women’s Health. Pumping and storing breastmilk. [Internet]. Silver Spring, MD, USA: US Department of Health and Human Services; 2018 [updated 2018 Jan 12; cited 2018 Apr 12] Available from: www.womenshealth.gov/breastfeeding/pumping-and-storing-breastmilk