Foteini Kakulas博士のインタビュー(2015)
母乳の幹細胞
西オーストラリア大学のFoteini Kakulas博士(旧姓Hassiotou博士)は、母乳の幹細胞を、骨細胞や脂肪細胞、肝細胞、脳細胞などの他の体細胞型になるように仕向けることができるということを証明しました。これがついに、非侵襲的な方法で多能性幹細胞を倫理的かつ簡単に得る手段となるのでしょうか?また、赤ちゃんの成長や発育に対して母乳が持つ独自の能力という点において、これは何を意味するのでしょうか?
最初の発見
2007年、Peter Hartmann教授、Mark Cregan博士と彼の西オーストラリア大学のチームは、母乳に幹細胞があることを最初に発見しました(Cregan et al. 2007)。Foteini Kakulas博士は、母乳に見つかった胎芽のような幹細胞が骨、脂肪分、肝細胞、膵臓細胞、脳細胞など、その他の体細胞となるよう命令を受けることが可能であることをはじめ、引き続き新たな発見をします。これは、過程の中で胎芽を破壊せずに幹細胞が再生医療の源となる新たな可能性をもたらします。
Kakulas博士は、Medela(メデラ)シンポジウムにて、ヨーロッパの聴講者に彼の発見について初めて紹介しました。博士は、この発見により、乳がんの研究、幹細胞治療、再生医療などの分野における探求の道が切り開かれたと説明しました。
つい最近、Kakulas博士は、ワルシャワで開催された第10回Medela(メデラ)シンポジウムにて博士が率いる細胞生物学チームによる最新の発見を発表しました。博士は、母乳で育った赤ちゃんの発達におけるこれらの細胞の役割を明らかにするつもりでした。赤ちゃんは、100万から10億単位の生きた細胞をお母様の母乳から毎日取り込み消化します。これは単なる偶然だったのでしょうか? これらの細胞は赤ちゃんの胃の中で生き続けることができたのでしょうか?
発表の中で、交差育成されたマウスモデルを使ってこれらの細胞の行く末を追った最近の実験について説明しました。マーカー遺伝子(TdTomato)を発現したマウスを使って、博士は、母乳から細胞が新生児の体内に取り込まれる過程を追うことに成功しました。この実験で、胃の中に生息している母乳の幹細胞を見つけることができました。また、さらに血液中、胸腺内、肝臓内、膵臓内、脾臓内、脳内でも見つかりました。また、幹細胞は機能的にこれらの器官の一部として取り込まれ、それぞれの器官固有のタンパク質を生成していました。
この発見は、新生児の体内で母乳の幹細胞が生き残った初のエビデンスを提供し、幹細胞が体内を移動して、機能的に新生児の器官の一部となり、新生児の発育上の利点を提供することがあることを示しています。
Kakulas博士は、次のようにコメントしていました。「Medela(メデラ)が支援する、母乳内の幹細胞へのこの心躍る発見の旅の一員であることを誇りに思います。これによって、たくさんの新しい研究への道が開かれるのです。幹細胞は母乳内に比較的多く存在しているため、この細胞の赤ちゃんの組織再生と発達における役割や、疾患の存在に及ぼしうる影響についてさらに明らかにすることに特に関心があります。」

Foteini Kakulas(旧姓Hassiotou)博士は次のとおり話しています。「母乳幹細胞の生物学が明らかになるのを目の当たりにし、私たちの知識をさらに一歩前進させる新しい発見を発表できることは素晴らしいことです。Medela(メデラ)の金銭的サポートのおかげで、この研究を実施することができました。この研究は、母乳が赤ちゃんにとって栄養源以上の大きな存在であることを示しています。また、母乳が母乳幹細胞の倫理的かつ非侵襲的な豊富な源となり得ることが明らかになりつつありますが、まだ多くの疑問が残っています。特に、母乳で育った赤ちゃんの体内の母乳幹細胞の機能がそうです。この心躍る発見の旅の一員であることを誇りに思います。この研究は、西オーストラリア大学で継続するつもりです。」